会社の設立 of 菊井行政法務事務所

会社の設立

 会社法という法律が新しくできてから会社の設立は容易になりました。
 確かに会社の機関は柔軟に設定することができるようになりましたし、資本金も事実上自由に設定できるようになりました。

 ただ、これら巷で指摘されていることは、会社設立の動機付けとして容易になったということであって、実務的な会社設立手続きはやはり面倒な作業であることに違いはありません。

 会社の設立が容易になったからといって、設立手続きが簡略化されたのかいうと、あながちそういうわけでもありません。
 一連の作業の中で使われる法律用語や、設置する機関によって異なる書類など、考え方によっては逆に面倒になったといえなくもありません。

 結局は、会社法や商業登記法などの法律の定めに従って手続きを踏んでいかなければいけません。
 ここでは、会社法によって何がどのように変わったのかについて、大筋をご説明していきたいと思います。

最低資本金規制の撤廃

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 資本金というのは、株式の発行により集められた資金のことで、会社の財産を見るときの基準の1つとなります。

資本金の額の算出方法は、

発行済株式の総数 × 1株の払込金額
 により計算できます。

 ただ、覚えておくべき事として、資本金の額は、今現在会社が持っているお金の額ではないということです。

 会社の登記事項証明書を取得してみるとわかりますが、ここには、「発行済み株式の総数」と「資本金の額」が記載されます。
 仮に、資本金の額が1000万円で、発行済み株式の総数が200株であった場合、「1株当たりの払込金額」は5万円ということになります。
 資本金は、この会社が1株あたり5万円で発行した株式によって得た金額を表示しているだけのことであって、今現在この会社が1000万円を持っているということを表しているわけではありませんので覚えておいてください。


資本金の額により会社を判断するというのは、危険な判断ともいえます。なぜならば会社が赤字決算であった場合、会社には資本金よりもずっと少ない金額しか残っていないということも。

 旧商法の時には、株式会社の設立には1,000万円以上の資本金が必要でした。つまり、1,000万円という金額が会社設立時の最低資本金と定められていて、これを下ることができず、資産的な要件としての大きなネックとなっていたのです。

 特に能力や技術を持っていてもパソコン1台で起業するような人、ベンチャー系で資金面に余裕のない人にとっては、この1000万円というハードルは非常に高いものです。
 能力の高い人の起業を促進する意味からも、従前の最低資本金規制を撤廃し、1円の資本金からでも会社を設立することができるようにしたものです。


有限会社的な株式会社

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 今の法律では、有限会社法という法律がなくなりました。会社法ができるまではこの有限会社法という法律によって有限会社を設立することができたのです。
 この有限会社という仕組みは、特に中小企業に向いた仕組みであって、大企業向けに設定されている株式会社と比較して、取締役会を置くかどうかが任意であったり、取締役自体の任期もないなどの特徴がありました。

 そのほかにも、監査役の設置も任意とされていましたし、資本金の額も300万円以上でよい、決算公告もする必要がないなど、株式会社よりも柔軟な会社運営をすることができたのです。

 この従来の有限会社を、会社法の下では設立することはできなくなっています。
 それでは、このような柔軟な会社はもう二度と作ることはできないのでしょうか?
 そうではありません。
 有限会社そのものは作ることはできませんが、株式会社の中で有限会社類似の組織にすることは、株式譲渡に制限をかける・定款で定めるという条件の中で認められています。

 株式譲渡に制限をかける、というのは難しく感じる言葉ですが、要するに会社が発行するすべての種類の株式を誰かに譲渡するためには会社の承認を得ないとできないということを意味します。
 このような会社のことを譲渡制限会社と呼んでいますが、これによって取締役の人数は1人以上でよい事になります。

 また、取締役の任期も最高で10年とすることが可能になりました。任期をなくす事はできませんが、これまで2年とされていた取締役の任期に比べればはるかに長い任期を設定することができるようになっています。

 では、任期を長くすることのメリットとは何なのでしょうか?
 株式会社の場合、役員の任期が切れるときに役員変更登記というものをしないといけません。法務局に対して行うものなのですが、この登記の際に登記申請書を作成し、議事録を添え、登録免許税を納付しないといけません。
 ちなみに、この役員変更登記は役員を全員入れ替えないといけないというものではありません。一般的には特に問題や事情がなければ今までの役員全員が一度役員から退任して、再度取締役に就任するという形が多いかと思います。これを重任(じゅうにん)の登記といいます。

 この重任の登記を今までであれば2年ごとにしなければいけなかったわけですが、任期を10年にのばすことで、手間や費用を省くことができるようになったのです。
 ただ、いいことばかりでもありません。やはり、考えておかないといけないこともあるのです。

 取締役を解任しなければいけなくなった場合、任期を10年と長くすることで残任期中に得るはずであった報酬額について損害賠償を求められる可能性もあるということです。
 取締役の任期を長くするのか、中くらいにするのか、短くするのか、会社の実情に会わせて、よく考える必要があります。

 またこのほかにも、取締役会の設置は任意です。ただし、取締役会を置いた場合は3人以上の取締役が必要です。取締役会を置かない場合には取締役は1人でOKです。
 監査役については、大会社ではない譲渡制限会社の場合であれば、これを設置するかどうかは任意とされています。


類似商号に関する規制

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 旧商法の時代には、同一市町村内で同一目的のために同一の商号を登記することはできませんでした。会社法ではこの規制が廃止されましたので、原則として不正目的でなければ既に登記されている商号を登記することができるようになっています。

 以前の商法では、類似商号調査が不可欠でしたから、予め商号の候補を2つから3つ程度考えておいて、法務局で商号のチェックを行っていました。
 慣れない人だと、何が類似に当たるのか判断が難しく、場合によっては法務局にその判定をお願いすることもあり、時間がかかっていました。

 しかし現在ではこの類似商号に関する規定が緩和されていますので、非常に楽になったということができます。
 ただそうは言っても、同一所在地に同じ商号を登記することはできませんので、ビルにテナントとして入居する場合には、やはり類似商号調査が必要です。

 また、同一所在地でなければいいとはいっても、誰もが知っているような大企業の商号を使用するということは、不正競争防止法によって規制を受けますので、使用できません。


銀行の通帳でOK

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 会社を設立する場合の手続きとして、資本金の払い込みというものがあります。
 従来はこの資本金の払い込みに関して、銀行から「払込金保管証明書」というものを発行してもらわなければならず、そのための費用も時間もかかっていました。

 銀行にもよるので一概には言えませんが、これまでにその銀行と取引関係にないところに払い込み保管証明書の発行をお願いしても断られてしまうということがあり、取引金融機関が見つからないなど、金融機関を決定するまでに時間がかかるということが多くあったのです。
 また、証明書の発行といっても無料でしてもらえるもではないので、その手数料としても馬鹿になりません。
 この「払込金保管証明書」がなければ、登記の申請ができないのですから一大事でした。

 会社法では、発起設立による会社の設立であれば、このような「払込金保管証明書」ではなく、自分が従来使っている銀行などの金融機関の預金通帳でもよいとなっています。

 これによって、出資金の払い込み作業が非常に楽になりました。

 但しです。
 この通帳による払い込みが認められているのは発起設立の場合であって、「募集設立」の場合には、この方法は認められておらず、従来通りに金融機関の払込金保管証明書が必要となります。


有限会社はどうする?

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 会社法が施行された後、有限会社は株式会社に一本化されました。
 有限会社法がなくなったことから、これ以降、有限会社を新しく設立することはできなくなりました。
 それでは、会社法施行前に既に存在していた有限会社はどうすればいいのでしょうか。

 この場合、次の二つの選択肢が与えられています。
これまで通りに、「有限会社」の商号を今後も使う
商号を「株式会社」に改める

 有限会社が作れなくなったからといって、有限会社がなくなるというわけではありません。 正式に言うと、「有限会社」は有限会社なのではなく、特例有限会社という名称の「株式会社」に生まれ変わったのです。

 今までの有限会社の商号はこれまで通り、「有限会社」を使うことが許されています。株式会社なんだけど、有限会社を名乗っていてもいいよ、、ということです。
 今まで通りに有限会社の商号を使うのであれば、法律上、特に何かをしなければならないことはありません。

 「出資口数」は「株式数」に、「社員総会」は「株主総会」などのように、有限会社法で使われていた用語は読み替えられることになります。

 前述の通り、会社法施行後かつての有限会社は、何もしなければそのまま特例有限会社という「株式会社」になるのです。株式会社になるとはいっても、商号は有限会社のままです。

 この有限会社は株式会社に変えることも可能です。
 まず、定款には「有限会社」という商号が書かれていますから、「株式会社」にするためにはこの定款を変更しなければいけません。

 そして、有限会社の解散登記・株式会社の設立登記をすることになります。この一連の変更登記にかかる登録免許税の額は6万円です。